先祖歴
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家系図をつくっていると、父方の家は浄土真宗、母方の家は曹洞宗のように、家ごとに宗派が違うことに気づくことがあります。両家の先祖の法事は一緒にしてよいのか。仏壇は二つあってもよいのか。自分は、家とは別の宗派を信じてもよいのか。このページでは、そんなときの考え方と、お寺への相談のしかたをまとめました。
先にお答えすると
・宗派の違う父方と母方の先祖の法事は、一緒にしてかまいません。お願いするお寺に、先にたずねましょう。
・家に仏壇が二つあっても、問題はありません。
・自分がどの宗派を信じるかは、本人の自由です。
昔から、結婚した人は、嫁いだ先や婿に入った先の家の宗派に合わせることが多くありました。そのため、父方と母方とで、宗派が違うのはよくあることです。祖父母の代までさかのぼると、四つの家それぞれに宗派と菩提寺がある、ということもあります。家ごとに宗派が決まった江戸時代の決まりと、それぞれの宗派の成り立ちは、「日本の仏教の宗派の歴史と成り立ち」にまとめています。
| 宗派 | おもな本尊 | 唱える言葉の例 |
|---|---|---|
| 浄土真宗 | 阿弥陀如来 | 南無阿弥陀仏 |
| 浄土宗 | 阿弥陀如来 | 南無阿弥陀仏 |
| 曹洞宗 | お釈迦さま(釈迦如来) | 南無釈迦牟尼仏 |
| 臨済宗 | お釈迦さまが多い(お寺によって違う) | お寺によってさまざま |
| 真言宗 | 大日如来 | 南無大師遍照金剛 |
| 天台宗 | お寺によってさまざま | お寺によってさまざま |
| 日蓮宗 | 曼荼羅(お題目) | 南無妙法蓮華経 |
本尊や作法、亡くなった人の名(戒名・法名)の形は、宗派ごとに違います。浄土真宗では、亡くなった人の名を「戒名」ではなく「法名」と呼び、「釋○○」の形にします。
法事や供養をどう考えるかも、宗派によって少しずつ違います。それぞれの宗派の説明から、要点を並べました。
浄土真宗
法事・供養法事を、亡くなった人のために善を積んで送る「追善供養」とは考えない。亡くなった人はすでに仏となっていて、法事は、参る一人ひとりが仏の教えを聞く場。
名と位牌法名(釋○○)。「戒名」とは言わない。位牌は用いず、過去帳などに記す。
浄土宗
法事・供養本来の法事は、仏さまの教えを実践すること。心をこめて「南無阿弥陀仏」と念仏をとなえることが、亡くなった人への追善の回向になる。
名と位牌戒名(法名)。位牌は亡き方の象徴で、生前と同じように語りかけ、あいさつする。
曹洞宗
法事・供養「供養とは、忘れないこと」。法事は本来、仏の教えや心を知ること。供え物や読経の功徳を、亡くなった人や先祖に回向する。
名と位牌戒名。位牌をまつるのが一般的。
臨済宗
法事・供養回向とは、善い行いの功徳を、すべての人に施すこと。法要や読経によって、亡くなった人を仏の道に入らせる。
名と位牌戒名。位牌をまつるのが一般的。
天台宗
法事・供養法事には、追善回向の意味がある。形だけの供養より、追善の心があるかが大切。
名と位牌戒名(法名とも)。戒を受けた証で、生きているうちにいただくこともできる。
真言宗
法事・供養供養を「ご廻向(えこう)」と呼ぶ。読経などの功徳が亡くなった人に届き、すべての人の成仏を願う善い行いにもなる(真言宗のお寺の説明)。
名と位牌戒名。位牌をまつるのが一般的。
日蓮宗
法事・供養仏壇は、ご先祖様へ感謝をお供えする場所。毎日を人として正しく生きることが、本当のお勤め。
名と位牌法号。位牌が増えたら、古い先祖から順に過去帳に移す。
言葉や考え方は違っても、どの宗派も、亡くなった人を大切に思う心を大事にしている点は同じです。違うのは、その思いの表し方です。宗派の違う家どうしで一緒に法事をするときは、この違いを知っておくと、お寺と話しやすくなります。
法事も仏壇もお墓も、もとは、亡くなった人を忘れずに大切にしたいという、今を生きる人の思いから生まれたものです。父方の先祖も母方の先祖も、どちらも自分につながる大切な人で、そこに分けへだてはありません。
宗派の違う家の法事の作法について、お坊さんの相談の場で、一人の僧侶は、作法にこだわりすぎて人を分けへだてるのは本末転倒で、場に合わせる心のゆとりを持ちたい、という考えを示しています。宗派の決まりは、思いを形にするためのやり方の一つです。お寺に相談するのは、形を整えるためで、思いそのものを決めてもらうためではありません。
先祖から受け継がれてきた想いについては、「受け継がれる想い」にまとめています。
そのうえで、「どのお寺にお願いするか」「どのお墓に入るか」といった形の所は、お寺や霊園の決まりがかかわるので、前もって相談が必要になります。
父方と母方の先祖の法事が同じ年に重なったとき、まとめて一度に行うことを「併修(へいしゅう)」といいます。宗派が違っても、してはいけないという決まりはありません。
お寺へのたずね方の例です。
法事に出るときの作法の目安は、次のとおりです。
法事の年は「法事の早見表」で計算できます。
母方の家に継ぐ人がいなくなり、母方の仏壇も引きとることになった、ということもあります。
両家の先祖を一つのお墓にまとめる形を「両家墓」といいます。できるかどうかは、墓地の種類で大きく変わります。
お寺の墓地
そのお寺の檀家になることが条件のことが多く、宗派の違う人を入れられないことがあります。
公営の霊園
宗派を問わず使えることが多く、両家墓にしやすいです。たとえば京都市は、「宗教宗派に関係なく、市民の皆様に広く御使用いただける市営墓地」として、使う人を募集しています。ただし、その市区町村に住んでいることなどの条件や、抽選があることが多いです。
民営の霊園
「宗旨・宗派を問わない」霊園なら、両家墓にしやすいです。
樹木葬・永代供養の墓
宗派を問わないものが多く、家族でまとめて入れる形もあります。
家の系譜(家系図など)、仏壇や仏具、お墓は、普通の財産とは別に、「先祖のまつりをする人」が受けつぐと、民法で決められています(民法第897条)。
お墓や仏壇は、遺産を分ける話し合いとは別に、受けつぐ人が一人で受けつぎます。相続を放棄した人でも、受けつぐことができます。
家系図も、この「系譜」にあたります。家系図をつくったら、だれが受けつぐのかを、家族で話しておくとよいでしょう。
この「受けつぐ人かどうか」は、次の「自分だけ別の宗派にしたいとき」の分かれ目にもなります。
たとえば、父方は浄土真宗、母方は曹洞宗。けれど自分は、浄土真宗ではなく、真言宗の教えにひかれている。そんなときはどう考えればよいのでしょう。
日本の憲法は、信教の自由を、すべての人に保障しています(日本国憲法第20条)。どの宗派を信じるかは、法律で守られた、本人の自由です。家の宗派と自分の宗派が違っても、かまいません。
考えることは、「自分の信仰」と「家の先祖のまつり(お墓・仏壇・法事)」を、どう分けるか、どうつなぐか、です。その分かれ目は、自分が家のお墓や仏壇を受けつぐ人かどうかです。
いちばん自由です。自分のお墓や仏壇は、真言宗のお寺で新しく持てます。父方や母方の法事には、親族として出て、その場の作法に合わせれば十分です。
選べる形は、大きく三つです。
1. 家のまつりは今の宗派のまま、自分の信仰は真言宗
中身お墓も法事も今のお寺にお願いし、自分は真言宗のお寺にもお参りする。
気をつけることいちばん負担が少ない形。自分が亡くなったとき、どちらで送ってほしいかを、家族に書いて残しておく。
2. 家ごと真言宗に移す(改宗)
中身今のお寺の檀家をやめ(離檀)、真言宗のお寺の檀家になる。
気をつけることお墓がお寺の墓地にあれば、お墓を移すことになる。先祖の法名や戒名をどうするかを、新しいお寺と相談する。
3. 宗派を問わない霊園や永代供養の墓に移す
中身父方・母方の先祖と自分を、宗派を気にせずまつる。法事は、そのつど真言宗のお坊さんにお願いすることもできる。
気をつけることお墓を移す手続きと費用がかかる。親族の了解をとる。
迷うときは、まず 1 から始めるのが安心です。何も壊さずに自分の信仰を持てますし、あとから 2 や 3 に移ることもできます。
お寺の墓地に移したいとき、新しいお寺から「うちの宗派の戒名として、つけ直していただければ、お引き受けします」と言われることがあります。そのお寺の墓地に入る人は、そのお寺の宗派の教えで送る、という考えからです。
けれど、先祖の戒名は、その人を送ったときの家族の思いがこもった名前です。何人もの先祖の戒名を全部つけ直すとなると、一人ずつお布施がかかり、家族にとって大きな負担にもなります。言われたときは、次のように考えましょう。
今のお寺への伝え方の例です。
父方と母方、祖父母の代の四つの家の、宗派と菩提寺、お墓の場所は、何十年もたつと、わからなくなりがちです。わかっているうちに、家系図に書き残しておきましょう。
・父方と母方で宗派が違うのは、よくあること。先祖に分けへだてはありません。
・どの宗派を信じるかは、本人が自由に決めてよいこと。
・決まりがかかわるのは、「どのお寺に頼むか」「どのお墓に入るか」という形の所。前もってお寺や霊園にたずねれば、たいていの道は見つかります。
・お寺の言うとおりにしなければならない、ということはありません。家族の思いに合うお寺や霊園を、選んでよいのです。
宗派の違う父方と母方の先祖の法事を、一緒にしてもよいですか?
してはいけないという決まりはありません。法事をつとめるのは一つのお寺になるので、もう一方の家の先祖の分も一緒にお願いできるかを、先にお寺にたずねましょう。
家に仏壇が二つあってもよいですか?
問題ないとされています。お坊さんの相談の場でも、同じ家に仏壇を二つまつっても問題はない、それぞれの家で信仰されてきた思いを大切に、と答えています。一つにまとめたいときは、菩提寺に相談しましょう。
自分だけ、家とは別の宗派を信じてもよいですか?
かまいません。どの宗派を信じるかは、本人が自由に決めてよいことです。家のお墓や仏壇を受けつぐ人の場合は、家のまつりの形をどうするかを、家族とお寺と話し合って決めます。
お寺から、先祖の戒名をつけ直すよう言われました。従わないといけませんか?
従わなければならない、ということはありません。戒名をそのままで受け入れてくださるお寺もありますし、宗派を問わない公営や民営の霊園を選ぶ道もあります。つけ直すと決めたときは、一人いくらかかるのかを先にたずねましょう。
お寺の檀家をやめるとき、離檀料は払わなければいけませんか?
法律で決まったお金ではなく、これまでのお礼として包むお布施とされ、明確な基準もありません。高い額を言われて困ったときは、一人で決めず、家族と話し合い、消費者ホットライン「188」にも相談できます。
参考にした資料